日本ではテニスの人気が高まっていますが、地域のテニスコートの空きが少なく、デジタルのスケジュール管理プログラムが無いことなど、気軽にテニスをできないという問題があります。アマチュアのテニスプレーヤーが、いつどこにいてもテニスをすることは難しいのが現状です。課題は、供給側(時代遅れの予約システムを採用しているテニスコート運営者)と需要側(テニスプレイヤー、コーチなど)の両方を同時に開発することでした。
テニスベアを利用するプレイヤーは、充実したデジタル機能を使用し、地域のテニスコートを検索し、予約することができます。テニスコート運営者は、コートをより多くの人に知ってもらうことができ、またプレイヤーの行動データを基に分析できるなどのメリットがあります。テニスベアの双方向のマーケットプレイスは、ネットワーク効果(トーナメント、プレイヤーコミュニティなど)を生む可能性もあり、これはバスケットボール、サッカーなど他のスポーツにも適用できます。
Tennis Bearのコミュニティ機能強化がビジネスも加速(江嵜慶)
Tennis Bear とMoonの関係は、インキュベーターとベンチャーというより、ともに走りながら成長してきた同志といったイメージの方が近いかもしれません。実際、Tennis Bearのスタートは2016年と、Moonがスタートする以前に遡ります。NTTデータでエンジニアとして働いていた増原が、自身が都内のテニスコート予約で感じた不便さを解消するために、前身となるウェブサイトを開設。三井物産で港湾、倉庫、鉄道などのインフラ整備プロジェクトに従事していた江嵜に声をかけたことが始まりです。
三井物産の社内起業制度に応募したのち、2019年9月、設立間もないMoonに参加したTennis Bearは、まずアプリの開発に着手します。Tennis Bearは、当初から場所(テニスコートの検索・予約機能)だけでなく、テニスを楽しむために必要な「仲間」と「道具」もワンステップで揃えられるサービスを目指していました。江嵜はこの当時のことを「サービスのコアな部分に関しては、Moon参加前と後であまり変わっていない」としつつも「Moonに参加してから行ったユーザーインサイトや、デザイナーとのディスカッションを経て、アプリでは特にユーザー同志の繋がりが生まれるような機能、スポーツの楽しさの根源ともいえるコミュニケーションの機能が重要だと再認識しました」と語ります。
こうして2020年1月にローンチしたアプリですが、当初は必要最小限の機能のみの実装でスタートします。「2020年は、ひたすらアプリの機能拡充をしていたように記憶しています。多い時は、ほぼ毎週アップデートしていたほどです」と振り返ります。週単位でのアプリの機能拡充を着々と進めつつ、ユーザーコミュニティの方向づけや活性化のために、積極的に運営主催のイベントを立ち上げていきました。また、ブログやYouTube、Twitterなども活用し、テニスに役立つ情報を提供することで、テニスファンからの認知を獲得するとともに、ユーザーとの良好な関係を構築していきました。
これらの草の根の活動は確実に成果につながり、昨年度1年間で、月間のアクティブユーザーは3万人から10万人へと3倍上の伸びを記録します。さらに、当初は100人にも満たなかったイベント参加ユーザーは、月間で5000人規模へと増加。Tennis Bearのサービスはテニスをする場所を探すだけでなく、テニスの楽しみも探せる場所へと確実に進化しました。こうしたコミュニティの活性化は、ユーザーのロイヤリティやリテンションの向上だけでなく「テニスベア運営でイベントを企画すれば、確実に集客が期待できるようになり、これらのイベントからの収益も増え始めています」(江嵜)。
また、テニスベアでは、「場所」「仲間」「道具」の縦軸でのサービスの深化だけでなく、テニスからフットサルやバスケ、野球などへの横軸への展開も当初から想定していました。「どのようなスポーツに可能性があり、どのようなニーズがあるのか? といったヒアリングは進んでいて、実はフットサルに関しては、すでにテスト的なウェブサイトも立ち上げています」。今後は、こうした種をいくつか撒きながら、横展開の可能性を見極めていくとのことでした。
現在、会社化に向けて準備を進めているTennis Bear。Moonのさまざまなベンチャーの中でも先頭を走っていることに関して江嵜は「特に先頭を走っていると意識したことはない」としながらも「他のEIRには、これまでのラーニングとして、主に自分たちが失敗したことをシェアしています。ベンチャーはどこでもそうだと思いますが、トライ・アンド・エラーでさまざまな打ち手を試して行く中で、失敗するケースがほとんどです。それを他のベンチャーが繰り返さないようにすることで、Moonに貢献できるのではないかと思う」と語ってくれました。
「他のEIRには、これまでのラーニングとして、主に自分たちが失敗したことをシェアしています。ベンチャーはどこでもそうだと思いますが、トライ・アンド・エラーでさまざまな打ち手を試して行く中で、失敗するケースがほとんどです。それを他のベンチャーが繰り返さないようにすることで、Moonに貢献できるのではないかと思う」
Entrepreneurs–in–Residence
江嵜 慶 Infrastructure Development Mitsui & Co., Ltd.
増原裕之 元NTT DATA
Moon Team:
川西 麻未 杉本 瞭
Executive Sponsor:
Jeremy Clark
Where Tennis Bear is today:
成熟期にあるベンチャー企業として、Tennis Bearは着実な成長と利益の向上に注力しており、バーンレートのコントロールが重要なスキルとなっています。屋外でのエクササイズは、日本で長く続いた非常事態の中でも成功しており、サービスは新しいユーザーやコートパートナーを獲得し、月間アクティブユーザー数とリテンションレートの両方を改善し続けています。現在Moonでは、Tennis Bearの独立に向けたスキームの構築を急いでいます。