コロナ禍により、自宅やオフィス、あるいは世界中の様々な場所でどのように働くか、誰もが改めて考えるようになりました。コロナ禍が終わった後、各個人と雇用者双方にとって、対面やリモートの会議、集中したい時、新しい考えや発想を生み出したい時のために便利で目的にあったスペースが必要になるでしょう。コロナ後の世界で人々がどのように働くかについて、望ましい形を構築することが課題です。
Suupは都心を中心に、レストラン、カフェ、シェアオフィスなどと協力し、空きスペースを活用してユニークで快適なワークスペースとして提供しています。Suupの双方向マーケットプレイスは2つの課題に対応し、解決しています。 1.ビルのオーナーは空きスペースについては収入が得られません。Suupはこうした「手が付けられない」資産をワークスペースとして有用なものとすることで、その価値を引き出します。 2.リモートワーカーは目的に合った柔軟なワークスペースを必要としています。Suupはニーズが拡大しているのに対処されていない市場にサービスを提供します。
Suupが提供する、ベストなワークプレイスとの出会い(堀口翔平)
多くの人が誤解しているかもしれませんが「ユーザーに最適なテレワークスペースを提供する」Suupのサービスは、コロナ禍で生まれたアイデアではありません。世界がテレワークへとシフトする少し前、アイデアを着想した2人のEIRがMoonのPalo Alto Studioに出向し、デザインサイクルを通じて2019年末に辿り着いたものでした。
そもそものきっかけは、三井物産のプロジェクト本部にいた堀口とICT事業本部にいた南原が、MoonのPitchに応募しようと、ビジネスアイデアを話し合うために集まった際に、駅前のカフェを探したもののどこも満席で、カフェ難民になってしまったことでした。この体験から「ビジネスマンが、最寄りのカフェを見つけられるよう、空席状況を可視化する」というサービスを着想、2019年の5月に開催されたMoonのPitchを通過し、Palo Altoでのヒアリングやブレインストーミングを通じて「カフェやレストランのアイドルタイムを、ビジネスパーソンにワークスペースとして時間単位で提供する」というモデルにピボットしたものだったのです。
しかし2020年の2月にPalo Altoから帰国した2人を待っていたのは、新型コロナの急速な流行と、引き続く緊急事態宣言でした。堀口は「渋谷周辺の10店舗を対象にしたβ版の開発を3月から始めたばかりで、さあこれからというタイミングでした。その頃は先行きを誰も予想できず、場合によっては今後数年に渡って家を出ることすらできないという話もありました」と、当時の不安な状況を振り返ります。この時期、多くのカフェやレストランと同様にSuupのサービスも一時的な停滞を余儀なくされました。それでも2人はこの間にFacebookで300人ほどのビジネスパーソンのコミュニティを立ち上げて意見を集め、企業の人事や総務、経営者の方からヒアリングを実施。その結果「コロナが落ち着けばテレワークが普及することに、確信が持てるようになりました」。
緊急事態宣言が開けると、予想通りwithコロナの時代の新しい働き方としてリモートワークに注目が集まります。「チャンスだと感じる一方で、同様のサービスが数多く名乗りをあげ始めていました。当初は年内を目処にじっくりとモバイルアプリの開発を進めていましたが、これは場所の取り合いになると感じ、提携店舗の拡大とアプリのリリースをとにかく急ぐ必要に迫られました。そこで、スケジュールを大幅に前倒し10月1日にiOSアプリを公開しました」。Suupは、公開直後にテレビ番組やメディアに大きく取り上げられるなど、出だしから好調なスタートを切りました。
しかし直後にSuupは一つの壁にぶつかります。「多くのメディアに取り上げられるなど、話題にはなっていましたが、実は、ユーザーのリピート利用が思ったほど伸びていませんでした」。堀口らチームは「ワークスペースを確保するために、お金を出してくれるのは個人よりも企業なのではないか」との仮説のもと、企業向けのトライアルをスタート。12月にはAndroid 版のアプリも急いでローンチし、2021年の1月に法人向けプランの提供を正式に開始しました。結果は良好で「1月からは倍々ペースで利用が増えています。年度末にはベンチャーや中小企業を中心に50社程度から契約を獲得し、ユーザーのリピート利用率も70%以上と大きく改善しました。また、利用可能なスペースも都内を中心に155を超えるまでに拡大しました」。
ここまで順調に成長を続けてきたSuupですが、実は2020年の年末に大きな決断を迫られていました。共同創業者である南原から、4月を目処に別の道に進みたいと打ち明けられていたのです。堀口は「実は、それ以前からこの日が来ることはある程度覚悟していました」と振り返ります。「もちろんSuupは2人だけで進めていたわけではなく、すでに心強いチームや多くのサポートもありました。とはいえフルコミットで同じ目線を共有できる南原が抜けることは、正直とても心細いことでした」。その一方で「役割分担をきちんとしていなかったこともあり、これまでの意思決定に関して少し後悔している部分もありました。何かを決めるときに相手の意見に合わせることで、少し責任を軽くしたいと無意識に思っていたのかもしれません。1人になったことで、自分のエゴや、ちょっとした違和感に、これまで以上に向き合いたいと思うようになりました」と明かしてくれました。
2022年は会社化に向けた期待も高まっていますが、これに関して堀口は「もちろん会社化を目指して、利用者や収益などの数字を伸ばすことは大切だと思っています。ただそれ以上に、このサービスがないと困るというSuupの熱烈なファンを増やしたいと思っています」とその想いを語ります。
また「機能やスペックとして仕事ができるスペースを提案するだけではなく、働く人のやる気や仕事の成果が上がるような場所を提案できるサービスにしていきたい。Suupがあれば外でも働けるのではなく、Suupを開いて出かけることでベストな仕事ができるようなサービスにしたい」と今後の豊富を語ってくれました。
「機能やスペックとして仕事ができるスペースを提案するだけではなく、働く人のやる気や仕事の成果が上がるような場所を提案できるサービスにしていきたい」
Entrepreneurs–in–Residence
プロジェクト本部 堀口翔平 Mitsui & Co. Ltd.
ICT事業本部 南原一輝 Mitsui & Co. Ltd.
Moon Team:
川西 麻未 藤井 正雄 Jeff Chen
Executive Sponsor:
Jeremy Clark
Where Suup is today:
Suupは、B2C(仕事場を探している個々のワーカー)とB2B(WFHの従業員に代替手段を提供したい企業)の双方で力強い成長を遂げています。東急電鉄をはじめとするパートナーとのプロモーションは、ダウンロードとアクティベーションの増加に大きな成果を上げており、8月には530件以上のチェックインと、単月での記録を更新しました。また、ユーザー調査を通じて、空間体験に付加価値を与える機能を特定し、強力なリピート利用を確保するための理想的な組み合わせを模索しています。